海ときどき山、ところによりキャンプ

オヤジの緩いアウトドアライフ

山行記(10)瑞牆山(みずがきやま) 登山&キャンプ

 瑞牆山(みずがきやま)は日本百名山にも名を連ねる山梨県北杜市にある標高2230mの山です。花崗岩でできた巨岩が積み重なったような独特の山容と、日帰り登山もできるアプローチの良さもあって人気が高い山で、私の登りたい山リストでも上位でした。瑞牆山には中腹の山小屋のテント場だけでなくファミリーキャンプ場もあるので、登山と焚火付きのキャンプを一度に楽しもうと、2021年9月にこの山行を組みました。

瑞牆山山頂から

 瑞牆山は登山口の瑞牆山荘から富士見平小屋を経て登るルートがメインルートで、瑞牆山荘まではJR韮崎駅からバスも出ています。富士見平小屋は登山口から1時間ほど登ったところにあり、山岳誌やガイドブックではここのテント場が紹介されていますが、瑞牆山荘から更に車で進んだ先にみずがき山自然公園キャンプ場があってこちらから瑞牆山に登るルートもあります。

自然公園キャンプ場をベースにすれば登山とキャンプの両方を楽しむことができますし、日帰り登山もOKです。自然公園の駐車場や途中の路肩に車を停めて森の中でハイキングやピクニックを楽しんでいる人も大勢いました。

不思議で怪しげな山容です

 サイトから瑞牆山を真正面に見上げる自然公園キャンプ場は瑞牆山荘を通り過ぎて少し進んだ先にあります。車乗り入れOKの芝と土の広いフリーサイト、利用料金も安くて(確か一人1500円だったかと・・・)人気が高いキャンプ場で、予約ができず先着順なので休日は午前中には一杯になってしまうことも多いようです。登って下りてきてからのテント設営ではサイト確保が厳しそうだと思っていたのですが、問合せたら「先着のキャンパーに音の迷惑をかけなければ早朝に入場してテントだけ張って山に登り、下りてきてからのチェックインで良い」とのことでした。ありがたいことです。

ファミリーやグループの他ツーリングキャンパーも多く、山中のテント場のような静けさはありませんが、たまには焚き火をしてキャンプを楽しみたい、コーヒーでも飲みながら今日登ってきた瑞牆山を眺めたいという方にはお勧めです。管理棟では薪やちょっとした食材、土産物なども売っていますし昼間は麺類などの軽食も食べられます。トイレや炊事場も奇麗に管理されていました。

早朝のキャンプ場から

 瑞牆山荘から富士見平小屋を経るルートは瑞牆山を右から回り込むように登りますが、自然公園からの黒森ルートは左から回り込んで登ります。富士見平ルートには名前が付けられた巨岩があったり、ロープ場や鎖場があったりしますが、黒森ルートも登山道の両側に現れる巨岩のスケールは同様、丸木橋を渡ったり、巨岩の間をすり抜けたり、ロープ場もあって負けず劣らずの面白みがありますし、何より登山者が少ないのが魅力です。今回は少し余分に時間がかかりましたが自然公園から黒森ルートを瑞牆山に登り、富士見平ルートを下って富士見平小屋から森の中のハイキングコースを自然公園に戻る周回コースを取り、富士見平ルートにある大ヤスリ岩や桃太郎岩などの巨岩やロープを伝った岩肌の登り下り(今回は下り)も楽しみました。

 

瑞牆山(みずがきやま) 標高2230m   2021年9月11日(土)・12日(日)

コース

 初日  自宅-みずがき自然公園キャンプ場(テント設営)-登山口

     -黒森ルート(不動滝)-瑞牆山-富士見平ルート(大ヤスリ岩・

     桃太郎岩)-富士見平小屋-みずがき自然公園(キャンプ泊)

 2日目 みずがき自然公園-増冨ラジウム温泉-帰宅

コース定数(みずがき自然公園-瑞牆山-富士見平小屋-みずがき自然公園)

 24.4(行動時間5時間50分、距離8.6㎞、累積標高差△1,067m ▽1,079m)

 

初日

自宅➡みずがき山自然公園

 静岡の自宅を4時少し前に出発、中部横断道から中央道を走って須玉ICで降り、県道604➡601➡23を走り継いでみずがき自然公園着は6時過ぎでした。キャンプ場には点々と20張くらいのファミリー用テントが張られていましたが、起き出しているキャンパーはまだちらほら、なるべく静かに車を乗り入れてサイトの端の大きく枝が張り出した木の下、正面に瑞牆山を眺めるところにテントを張りました。ペグを打つ音が響くと迷惑かな・・・と思っていましたが、サイトの端だったこともあってか足の裏で強く踏み込めばペグが入っていく程度の柔らかさでした。テントを張り出発準備をしている間にも何台か車が入ってきていました。またキャンプ場から道路を挟んで一段高くなったところに公園の駐車場がありますが、日帰りの登山者でしょう、こちらにも既に10台ほど停まっており、新たにポツリポツリ入ってきては準備をして登山口に向かって歩き出していました。

 

登山口➡瑞牆山(黒森コース)

 7時10分にキャンプ場を出発、キャンプ場から林道を20分程歩いたところ、舗装路から未舗装の林道に入った先が黒森ルートの登山口です。登山口の前にも数台駐車できるスペースがありましたが林道の入り口に車止めがありました。登山道は斜面や林の中を歩き比較的明るい感じ、前を塞ぐように現れる巨岩(岩と云うよりは岩壁です)を回りんだり、丸木橋や石を踏んで何度か渡河をしながらしばらく渓流沿いを進みます。大きな岩の表面を流れる不動滝を過ぎるとやがて森の中の本格的な登りが始まり、夫婦岩、摩天岩、弁天岩などの名前を付けられた巨岩を左右に見ながら登り、最後にロープを頼りに岩壁を這い上がると山頂直下で富士見平ルートと合流していよいよ瑞牆山山頂です。山頂に立つためには大きな岩を一つ、ロープを頼りによじ登らなければならず、岩の表面には足をかけられる窪みなどもありましたが、小さな子供や小柄な女性は少し苦労していて家族や仲間が押し上げたり引っ張ったりしていました。

黒森ルート登山口

左右に巨岩がそそり立ちます

不動滝です

もう少しで山頂 ロープが頼りです

山頂直下で富士見平ルートと合流

途中設置場所が悪く登山道の方向とずれている道標が何か所かありました。注意していればすぐに気付きますが、特に登山道が直角に曲がり川を渡った先でクランク状に登りに入るポイントでは直進方向に細い踏み跡があり、道標がそちらを指しているようにも見えて誤って入り込んでしまいました。間違いに気づいて引き返していると同じように間違えて入ってきた方とぶつかったので、ここで間違える方は多そうです。よく見ると正しいルートは右手の川の向こうに見えてはいましたが、川には橋もなく踏み跡も判らず気が付きませんでした。踏み跡はしっかりついていますが、他の山に較べルートを示す赤テープなども少な目に感じたので、あれ?と思ったら立ち止まって良く周りを見渡したり判るところまで引き返すほうが安心です。

 

瑞牆山山頂

 山頂着は10時10分、キャンプ場からゆっくり登って3時間でした。

巨岩が積み重なった山頂は南側に広く開けています。残念ながら雲が多い空模様で特に南の方角に雲が多く、富士山は隠れていましたが東南に金峰山、西には八ヶ岳が見えていました。岩の端に立つと足元が見えないので一層高度感が感じられました。

流石に山頂は人が多く、入れ替わりながら常時30人近くはいたように思います。お湯を沸かして山頂での時間を楽しんでいる人も多く、私も金峰山を正面に見る岩の上に場所を見つけ、景色と軽食と山コーヒーを楽しみました。今日は下りたところでキャンプ、テントも設営済ですから先を急ぐ必要もありません。すっかりくつろぎ山頂で1時間以上も長居してしまいました。

瑞牆山山頂にて

金峰山の五丈岩がよく見えています

こちらは八ヶ岳

直下に見えているのは大ヤスリ岩です

山頂➡富士見平小屋

 11時30分に山頂を出発、富士見平ルートを下山しました。山頂直下は大きな岩の間を縫うように急降下していきます。山頂から足元に見えていた大ヤスリ岩も横を通ると頭上に高くそそり立ち迫力がありました。家族連れも多く、身体よりも大きな岩を一生懸命よじ登って来る小学校低学年~年長さんくらいの子供たちも沢山いました。

道はやがて森の中に入りますが、ロープや鎖で登り下りする1枚岩の斜面や真っ二つに割れた巨大な桃太郎岩が現れて飽きません。登りならなおさら面白みがあるルートです。桃太郎岩の下には沢山の突っかえ棒が刺し込まれています。別にこれで支えられている訳ではありませんが、少しでも力添えできればと私も小枝を加えておきました。桃太郎岩からは道も歩きやすくなります。山頂から60分で富士見平小屋に到着しました。

富士見平ルートはこの間を下っていきます

山頂からは足下に見えた大ヤスリ岩

大岩の間を縫うように登り下り

ロープや鎖を頼りに登り下り

怖さよりも面白さが勝ります

これが桃太郎岩 桃太郎が割ったということでしょうか?

あそこから下りてきました

富士見平小屋

 12時30分富士見平小屋着、富士見平小屋は小さな山小屋でしたが、明るい林の中の斜面に建っていて狭苦しさを感じさせない、小綺麗で落ち着いた感じの外観でした。電気は来ておらずランプの小屋だそうですが、すぐ下まで林道が通じていて歩荷をしなくてもよさそうです。小屋の前のベンチでかき氷を食べながら一休み、餌を置いているのでしょうか、小屋の入り口の脇で野鳥が出たり入ったりしていました。何という鳥でしょうか、鳥の名前も覚えたいと図巻も買ってありますが、歳のせいか視力と記憶力がどんどん悪くなっていてなかなか覚えられません。

富士見平小屋のテント場は小屋の下の傾斜の少ない斜面の林間に広がっていました。張られていたテントの数は多くなかったですが、午後にはもっと増えるのでしょう。静かで居心地も良さそうでこちらでのテント泊も楽しそうです。水場は瑞牆山荘に下りる登山道の脇を下りたところにあります。少し水を補充して12時50分に出発しました。

こちらが富士見平小屋

富士見平小屋➡みずがき山自然公園

 富士見平小屋から瑞牆山荘登山口まではそのまま登山道を下りますが、みずがき山自然公園へは、林道を少し下りたところでハイキングコースに入り、徐々に深くなる森の中を下って行きます。人気もなくとても静かで、私が下った時は富士見平小屋から自然公園までの1時間、出合った人はたった一人でした。ただ道は整備されはっきりしていて道迷いの不安などを感じることはありませんでした。途中に分岐もありますがどれを進んでも瑞牆山荘と自然公園を結ぶ道に出るか、直接自然公園に出るかのようです。自然公園まで約400mの標高差を下りました。

気持ちの良い道が続きます

みずがき山自然公園

 自然公園に戻った時にはキャンプ場はテントと車で一杯、テントを張っておいて良かったです。改めて受付をして料金を支払いました。サイトは管理棟を中心に左右に広がっており、どこからでも瑞牆山が見えます。ただしサイトには場所柄いたる所に鹿の糞が落ちています。

まあ丸く小さく硬めで臭いも少ないので私は気にしませんでしたし、気にしたらテントも張れませんが、気にする人は足元に注意しましょう(と云っても多すぎて注意のしようがありませんが)。

私のテントは瑞牆山に向かって左の隅、他のテントや車越しになってしまいましたが、座椅子に座り込んでいても瑞牆山が近く大きく見通せました。のんびりコーヒーを飲みながら時折雲に隠れたり、だんだんとシルエットになっていく瑞牆山を眺めて過ごし、暗くなったら焚火台で焚火をして・・・登山とキャンプのこんな組み合わせも良いものです。

テントからでもこんな風景が見えます

沢山のテントと車が・・・

キャンプに焚き火は欠かせません

翌日

 前日よりも雲が多く瑞牆山は隠れがちでした。早い時間に目を覚ましましたが帰りに温泉に寄って帰るつもりだったので開湯時間に合わせてのんびり撤収しました。

須玉や韮崎に下りる途中、みずがき山自然公園から30分くらいのところに増冨ラジウム温泉があります。

武田信玄隠し湯の一つ、ラジウムの効能を期待した古くからの療養泉と云うことで数件の温泉宿と立ち寄り湯「増冨の湯」があります。25℃・30℃・35℃・37℃の浴槽からリラックスして入れる温度を選んで長めに浸かるので、ほとんどの方が目を閉じて身体を伸ばしてゆったりしており、30℃の湯に浸かって文庫本を読んでいる方もいました。食事もできますし地場の土産物もあり、大人一人830円で登山やキャンプ帰りにお勧めです。長く浸かっていて疲れることもありません。

 増冨の湯で2時間ほどゆっくりして帰路につきました。帰りは県道23から茅が岳広域農道通って韮崎ICから中央道、中部横断道を走って15時頃に無事帰宅しました。茅が岳広域農道は走りやすくさほど時間も変わりません。途中観光施設、りんごやぶどうなどのフルーツ農園もあって須玉ICで乗り降りするよりお勧めです。

なんとも不思議な山容です

今回の行程

あとがき

 山のテント場は大抵焚火禁止ですが、登山口から少し走れば焚火ができるキャンプ場がある山は多いと思います。でも間に車の移動が挟まるとベースキャンプ感が薄れるような気がして・・・。

2023年6月に登った金峰山は登山口の大弛峠のテント場でテント泊をしましたが、大弛峠から更に奥に進んだ

先、小川山の下にある廻り目平のキャンプ場は日本のヨセミテとも云われているようで直火の焚火もOKということです。行動時間は延びますが金峰山へのルートもありますし、小川山も瑞牆山のような巨岩の山容でロッククライミングの聖地と呼ばれているとのこと、小川山まで歩くだけでも楽しそうですから、いつか廻り目平で登山&キャンプをしてみたいと思っています。

これが小川山です(金峰山から)

 瑞牆山は登っても眺めても楽しい山でした。キャンプと温泉の組み合わせもGOODで是非また行きたいですし、登り下りのルートを入れ替えたりテント泊や小屋泊りにしても良い、他の方にもお勧めしたい山行でした。

実はこの2週間後にも母と妻を連れてみずがき自然公園に行きました。登山が目的ではなく日帰りの紅葉見物で、紅葉には少し早かったのですが、瑞牆山の山容と帰りに寄った増冨の湯、フルーツ農園は二人とも気に入ってくれました。

紅葉が始まった瑞牆山(自然公園から)

天気が悪かったのが残念です